ちびまる子ちゃんの考え事

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を聴診器のように壁に

店の看板を見つけ、その前に立った。通りに面した陳列ケースには、各種盗聴器が並べられていた。広告に出ていたコンクリート・マイクもあった。どれも結構な値段だ。
 奥をのぞくと分厚い眼鏡をかけた色白の若い男が一人で店番をしている。どうせおまえも盗聴マニアなんだろう。博は蔑《さげす》んだ目でちらりと見やった。
「そこにあるの、安くなりますよ」眼鏡が声をかけてきた。
「ふうん、そうなの」
「何をお探しですか」
「あ、いや、たまたま通りかかっただけなんだけどね」悠然と答えたつもりだったが顔が熱くなった。
 しばらくこちらを見てから眼鏡が雑誌に目を落とす。このサエない男ならいいか。博はなぜかそんなことを思った。
「ちなみに、このコンクリート・マイクっていくらになるわけ」
 今度は博から話しかけた。二万五千円の値札がついたものだ。
 眼鏡がカウンターから出てきて博の横に立った。自分より十センチ以上背の低い小男だった。哀れみを覚える。一万八千円までなら」
「ふうん」
 無関心を装うものの心がはやった。これを手に入れたら、上の部屋の声はもっと鮮明に聞こえる。しかもコップに耳をつけるという無理な体勢でなく。
「ちょっと見てみますか」男がショーケースの鍵を開けて商品を取りだした。「この部分がマイクで、これをコンクリートに当てると壁の向こうの音が聞こえてくるわけですね」
「へー、面白そうだね」
「電池は単三が二本で三十時間ぐらいはもちます」
「ふうん」
「もっと高性能の機種もありますが、一般のマンションの壁だとこれで充分だと思います」
「へー、そうなんだ」
「ボリューム調整すればたいていの壁には対応できます。保証期間は一年です」
 眼鏡は商品説明をするとコンクリート・マイクをしまいかけた。
「じゃあ、それ、もらおうかな」
 博は思わず言っていた。これを逃すと手に入れる機会はないと思ったのだ。
「ありがとうございます」眼鏡が無表情のまま頭を下げる。
「まあ、ものは試しっていうから……。ぼく、マスコミ関係の仕事をしてるからいろんな製品に詳しくないといけないしね。あはは」
 言い訳しつつ汗をかいていた。一刻も早く支払いを済ませてこの場を離れたくなった。
 眼鏡は商品を箱に詰めながら、「お客さん、どの雑誌の広告を見たんですか」と聞いてきた。博は思わずエッチ系の雑誌の名前を告げてしまった。
 この男は、最初から博を通りがかりの客だとは思っていなかったのだ。
 猛然と腹が立った。このチビが、と罵《のの》りたくなった。店をあとにしながら二度と来るものかと思った。
 しかし足取りが軽いのも事実だった。
 コンクリート・マイクを手に入れたのだ。
 これで今夜から無理な姿勢を強いられることなく、思う存分盗み聞きができる。
 消費税込みで二万近い散財は痛かったが、浮きたつ気持ちの方が大きかった。
 博は帰るなり、まずは隣の部屋でコンクリート・マイクをテストしてみ


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