ちびまる子ちゃんの考え事

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ひそかに葉子は期待して

 アメリカ人の一行から四名、日本人の一行から二名が飛行機からおりてもらいたい。それぞれの荷物もいっしょにおろす。気流の状態が不安定なので、そうしないと、航空の安全を保証できないというのである。
 アメリカ人ツアーは総勢四十数名だった。日本人は十五名。ツアーはともに二人一組が原則なので、アメリカ人二組、日本人一組の割り振りになったらしい。
 ここでおりた人たちは、あすの便で西安へ着くようにはからう。むろん当地のホテルも確保する。だれとだれが当地にのこるか、いそいできめてくれと通告されたのだ。
「人をおろさんとよう飛ばんなんて。なんという飛行機や。よくもこれで観光誘致をやりよるもんやな。あつかましいやつらじゃ」
「おどろく
「この街にいても、だから危険はないと思うのス。ええ大丈夫。一日や二日なら、娘の世話にならなくてもやっていける」
 父はステッキで体をささえ、胸を反らせた。沢田のつくったくじは燐寸の軸だった。
 父がくじに当るのを、ひそかに葉子は期待していた。その場合は父の看護を口実に、葉子は信陽にのこる。沢田とゆっくり二人きりになる時間がとれるはずだ。だが、期待は裏目に出た。父はくじにはずれた。新婚の田中がひきあててしまったのだ。
「いやだ、私。シンちゃんとはなれるのなんか、いやだ。さびしいもん。私、のこる。沢田さん、いてくれるんでしょう」
 田中の妻が涙ぐんで駄々をこねた。夫のほうも、悄然としてしまっている。
「わかりました。ご夫婦がのこられると、ホテルの部屋をとるのがむずかしいんだが、まあやってみましょう」
 苦笑して沢田がひきうけた。
 ほかの者は冷たく田中夫婦をみていた。こうなることをだれもが期待していたふしがある。すぐに一行はそっぽを向いた。期待どおりになったので、気恥ずかしい思いにみんなかられたのである。
 アメリカ人の一行の「犠牲者」もきまったようだった。のこされる六名の荷物が飛行機からおろされてきて、それぞれ持主のチェックをうけた。その仕事が終ると、搭乗案内になった。一同は改札口を通った。
「沢田さんともこれが最後かもしれんなあ。このおんぼろ飛行機じゃ、いつ墜落してもふしぎやないからの」
 改札口で見送る沢田に坂橋が声をかけた。妻にたしなめられている。
 機はぶじに信陽の空港を飛び立った。人と積荷が減って、たしかに軽快な飛行になったようだった。一行は眠りはじめた。葉子は文庫本に読みふけった。沢田とはたった一日か二日の別行動である。それでも旅から、張りあいがなくなった。心と体にたいする刺戟物が急に消え去った感じである。
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